千早太夫の部屋

このページは紳士の社交場吉原大文字屋の提供でお送りします。
千早太夫は大文字屋抱えの遊女です。


(鄙埋仁)残念ですが今日は千早チャンは出掛けていて、その妹女郎の神代チャンが一人で留守番をしています。もちろん他に誰もいないからと神代チャンに手を出しちゃうのは御法度ですよ。なにしろ相手は「妹」なんですから近親相姦になっちゃいます。

 ところで千早、神代と来れば言わずと知れた相撲の龍田川。この三人の悲恋物語は在原業平朝臣によって

ちはやふる神代も聞かず龍田川
 カラ呉れないに水くくるトワ

と三十一文字に歌われて、ずいぶんと浮き名を流したものです。龍田川関はこの事件をきっかけに国許に帰って豆腐屋になってしまいましたね。皆さん、二の舞を踏まないように気をつけましょう。

 千早チャンのことを知らない初会のお客さんのために説明しておきますが、千早太夫は俗名を「とは」と謂い、吉原大文字屋の花魁で御年十八歳、大門脇の高札場にいつも張り出してある遊女の細見で、一と上がって二と下がったことがないのが自慢の松の位の太夫職です。神代チャンの方は十六歳のキャピキャピの新造です。二人とも有名な女流狂歌師で、吉原の花魁なのに眉も拵えず化粧もせずお歯黒も付けずに客の相手を勤め、後にこれを深川の芸伎が真似をしています。

 千早チャンの方は虫が大好きで腹の虫やら浮気の虫、信号無視から土瓶蒸しに至るまでムシと名の付くものなら知らぬものはないという女流生物学者でもあります。虫好きの大名旗本の間でとても人気があり、彼女のファンクラブ赭鞭会が結成されています。今日千早太夫が留守なのもそのせいで、大奥で珍しい虫が捕まったとかで、お呼びが掛かったのです。今日は蕎麦屋竹林庵二階の狂歌の会もあるし、千早チャンどうしようかと思って、

カハ虫ノなヲ求ムルヤよし原ハ
 出ルよしトテ稀ノ細道

大奥からの返歌が

人に似ぬ廓の内に稀なるは
 何処も同じ出るヨシとは

千早太夫、袖を濡らして大奥へ向かいました。(お化粧をしていないとこういうときに塗装が剥げる心配をしないで涙を流すことが出来るから良いですね)

(98/01/20)


bijinga (遊冶郎)太夫が留守で本当に残念ですね。一目でも花魁の姿を拝みたいという人のために左に千早チャンの絵姿を描いておきました。この絵姿は蔦重さんから近々売り出される予定ですよ。

(98/07/17)


 千早太夫に関する情報をお持ちの方は本会書記柳亭花粉彦までお知らせ下さい。面白かったらここへ掲載します。